Abandonment.委付には保険委付と免責委付がある。
① 船舶保険においては、全損ではないが、船舶の修繕不能のように、被保険者にとっては経済的に全損同様の状態におちいることがよくあるばかりではなく船舶の行方不明のように、全損になったことがほぼ確実であるのに、その証明がつかないような事態が起こりがちである。保険委付とはそのような場合に、保険の目的物をあたかも全損にかかったものとみなして、被保険者にいち早く資本回収の道をあたえるものである(商法第833条、834条、839条1項)。
② 免責委付とは、船舶所有者が海産(注参照)の権利を債権者に移転し、その限度において責任免除をうける行為をいうのであって、相手方のある単独行為である。一定の法律効果を生ずるから委付権は形成権と解される(商法第712条、715条)。
(注) 「海産」とは、船舶所有者が、その負担する特定の債務につき、それを委付して免責を受けることができる財産の総体をいう。